クールな御曹司の甘すぎる独占愛
ところが店舗運営や経営数値に関しては素人同然で、ここ一年の売上は緩やかな右肩下がりが続いている。その実情はわかっているが、打開策を見いだせていないのが現状。
このままだと光風堂は潰れちゃう……。
奈々はどんどん自信を失いつつあった。
厨房の隣に併設されたスタッフ用休憩室でスマホ片手に照明の手配を済ませ、奈々が再びフロアへ出ると、ちょうどお客がひとり飛び込んできた。
濃紺のスーツに身を包み、すらっとした長身の爽やかな男性である。歳は二十代後半くらいだろうか。その彼がキョロキョロと店内を見渡す。
「お待ち合わせですか?」
奈々が声をかけると、男性はハッとしたように振り返った。
「あ、いえ、ここにクラブハウスサンドは……ないですよね。店を間違えたかな」
目に留めたショーケースに並んでいるのが和菓子だと気づいた彼は、「確かに光風堂って言っていたんだけどな」と頭を掻く。
「それでしたら、こちらでもお出しできますが……」