クールな御曹司の甘すぎる独占愛

◇◇◇

水瀬が連れていってくれたイタリアンレストランでコース料理を楽しんだ奈々は、再びタクシーに乗せられ自宅マンションへ送り届けられた。

そこへは父が亡くなったあと、両親と暮らした家を引き払い越してきた。地上十階建ての中層マンションだ。光風堂へは電車を乗り継いで二十分の距離。奈々の部屋はそこの五階にある。


「ここで少し待っていてください」


運転手にそう告げた水瀬が、奈々と一緒に降り立ちエスコートするように歩きだす。


「部屋の前まで送るよ」
「私ならここで大丈夫ですから」


そこまでしてもらうわけにはいかない。それでなくとも光風堂の相談に無料で乗ってもらっているうえ、食事までご馳走になってしまった。


「時間は遅いし、部屋にたどり着くまでに奈々さんになにかあったら困る」
「一応オートロックなので」


そう言ってみたが、聞こえていないのか水瀬は奈々の腰に手を添えて歩き始めた。光風堂は高級ホテル・エステラにある。華麗に女性をエスコートする男性は、奈々も数え切れないほど見てきた。

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