クールな御曹司の甘すぎる独占愛
「あ、エステラと言えば、今度、映画のロケがあるって噂を聞いたんだけど、奈々はなにか聞いてる?」
「映画のロケ? エステラで?」
奈々は初耳だった。
真弓は高校時代から映画が大好きで、とても詳しい。特に好きなのがハリウッド映画で、彼女に言わせると、スケールも迫力も映像もほかの国のものとは比べものにならないそうだ。映画好きが集まるSNSで、エステルでのロケが確かな情報として流れているらしい。
「なんと、ジャック・スペクターが主演なの!」
最近の真弓が気に入っている俳優だ。リビングのソファの上にも、彼が表紙を飾る映画雑誌が置かれている。あの表紙はしばらくしたら、真弓のスクラップブックに貼られるだろう。ため込んだジャック・スペクターの切り抜きを見せられたことが、奈々は何度もあった。
「そうなんだ」
「奈々ってば反応が薄いんだからぁ」
「ごめんごめん」
温度差の違いに膨れる真弓に、両手を合わせて奈々が謝る。