クールな御曹司の甘すぎる独占愛

◇◇◇

真弓の自宅の住所をメールで送り、美弥に癒されながら五時を待つ。

理由はどうであろうと水瀬にこれから会うのかと思うと、それだけで奈々は次第に緊張してくる。化粧ポーチに入っている鏡でこっそり髪や化粧崩れをチェックしていると、真弓から「いったい誰に会うつもり?」とからかわれた。

奈々のスマホに着信が入ったのは、五時を十分ほど過ぎたときだった。応答をタップすると、水瀬はあと五分くらいで着くと言う。

美弥が抱きついて離れない真弓に代わって紅茶のカップを片づけ、三人で玄関から外へ出る。もうそろそろ桜が咲いてもいい陽気だ。頬を撫でる空気がやわらかい。


「遅くまでお邪魔してごめんね」
「そんなのぜんぜん平気だよ。美弥と遊んでくれて、こっちこそありがと。ずっと家にふたりでいるから、奈々が来てくれて楽しかった」
「私も久しぶりに真弓と美弥ちゃんに会えて楽しかった」


店と自宅の往復ばかりの毎日。真弓たちとの時間は、束の間忙しさを忘れさせてくれた。こういう時間も大切だ。


「また来るね」

< 78 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop