クールな御曹司の甘すぎる独占愛

明美が受け取った名刺を覗き込むと、“『ネクサス・コンサルティング』柳健太郎(やなぎ けんたろう)”とある。

ネクサス・コンサルティングといったら外資系のコンサルタント会社で、最近はメディアでも頻繁に名前を見聞きする有名な企業だ。
以前、奈々は経済系の雑誌でアメリカ人CEOのインタビュー記事を読んだことがある。クライアントはIT企業からサービス業、金融機関にいたるまで様々で、コンサルタント業界では世界でも五本の指に入ると書かれていた。

そんなにすごいコンサルタントがここでセミナーを開くなんて、さすがはエステラ。

そうして奈々が感心しているうちにクラブサンドが出来上がる。立て続けにお客が来店したため接客のある明美に代わり、奈々が届けることとなった。

エレベーターを五階で降り、トレーにのせたコーヒーが零れないよう絨毯の敷かれた通路を慎重に歩く。指定された鳳凰の間を左手に見ながら通り過ぎ、控え室のドアをノックする。扉の向こうから「どうぞ」と声が聞こえたので、「失礼いたします」と頭を下げながら中へ入った。


「水瀬様でいらっしゃいますか?」


奈々が顔を上げながらそう問いかけると、彼は電話中だったようで手をひらりと上げて、待つようにといったジェスチャーをした。

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