クールな御曹司の甘すぎる独占愛
ベージュを基調とした控え室は十畳ほどの広さで、長く細い木製デスクが壁に沿って配置されている。奈々はそのデスクにいったんトレーを置き、彼の電話が終わるのをドア付近で待つことにした。
さきほど店に来た柳はこれからセミナーがあると言っていたから、電話中の彼も関係者だろう。
こちらに背を向けて窓辺に立つ彼と奈々との距離は、およそ三メートル。すらりとした長身で手足がとても長い。柳も背は高かったが、その彼よりも高い印象。ネイビーブルーのスーツはおそらくオーダーメイドだろう。彼の身体のラインにぴったりである。流暢な英語で通話する様子が様になっていた。
しばらくして通話を終えた彼がこちらに振り返ると、奈々は一瞬にして目を奪われる。
涼やかでやわらかい微笑みを浮かべた目もとは知性を感じさせ、鼻筋はみごとなまでに通っている。無造作にまとめたヘアスタイルは癖毛のある栗色。王子様が現実にいたらこんな感じだろうと思わせる甘いマスクだった。
呆けたようにする奈々に気づき、彼が「どうかしましたか?」と小首を傾げる。
「あ、いえっ」
激しくまばたきを繰り返し、奈々は首をひと振り。近づけられた彼の顔に頬が熱を帯びた。