クールな御曹司の甘すぎる独占愛
「これからは奈々さんに付き合ってもらおうかな」
「えっ……」
赤信号で車が静かに止まり、水瀬は奈々に優しい笑みを浮かべた目を向けた。
どことなく真剣な眼差しに見えるのは錯覚なのか。本気にも冗談にも聞こえる言い方に、奈々はどう反応したらいいのかわからない。
水瀬の周りにいる女性たちなら、きっと気の利いたセリフで切り返せるのだろう。だが、奈々にはそんなテクニックはない。
奈々は息を止めてその目を見つめ返していたが、後続車にクラクションを鳴らされ、ふっと緊張の糸が途切れる。
再び車が走りだし、奈々はゆっくりと息を吐き出した。