クールな御曹司の甘すぎる独占愛
《奈々、今どこ?》
「え? 今? えっと……どこだろう」
急に聞かれて面食らう。
あたりをキョロキョロとしてみるが、水瀬に連れてきてもらった奈々は自分がどこにいるかわからない。
「どうかしたの? 佐野くんはもう仕事終わり?」
《もうちょっとであがるとこ。今日、光風堂は定休日だろう? メシでも一緒にどうかと思ってさ。ほら、この前行けなかったから》
「ごはんか……。ごめん、あのね――」
無理だと断ろうとした瞬間、奈々の腰に腕が巻かれ一気に後ろに引き寄せられる。
水瀬に抱きしめられたのだと気づいたのは、耳もとで「奈々」と囁かれたときだった。
これまでになく奈々の心臓が大きく飛び跳ねる。
――水瀬さん?
突然の事態が奈々に訪れる。頭が追いつかないというのはこういうことなのかもしれない。
《……誰かと一緒なのか?》
電話の向こうで佐野の声のトーンが下がった。
「あ、う、うん……えっと」