クールな御曹司の甘すぎる独占愛
どう答えたらいいのか奈々が迷っていると、水瀬は抱きしめる腕の力を一層強くした。
――いったいどうしたの?
なにが起こっているのかわからず、奈々が困惑する。
《奈々?》
「奈々、行こう」
佐野と水瀬の声が被る。水瀬はわざと佐野に聞こえるような声で奈々の名前を呼んだ。
「は、はい……」
水瀬にそう答え、「佐野くん、ごめんね。また」と佐野との通話を切った。
水瀬の手によってゆっくりと身体を反転させられた奈々は、理解しがたい事態を前にしてうつむく。心臓は、これ以上ないくらいに速いリズムを刻んでいた。
「ごめん、奈々さん」
呼び捨てが、再び“さん”づけに戻る。
「佐野って名前が聞こえたから、黙っていられなかった」