クールな御曹司の甘すぎる独占愛

水瀬の言っている意味が奈々は理解できない。

佐野の名前が聞こえたから? 黙っていられない? 

いくら考えてみても、その理由が思い当たらない。


「今動かなかったら、奈々さんを佐野に奪われると」
「……え?」


奈々が見上げると、水瀬はいつになく真剣な目をしていた。

ただ、佐野が奈々を奪う理屈もわからなければ、それが水瀬のなににかかわるのかも、とにかく奈々にはなにがなんだかわからない状態だ。錯乱していると言っても過言ではない。


「意味がわからないって顔だね」


水瀬が困ったように笑う。呆けたようにする奈々を見て、水瀬は表情を引きしめ真顔に戻した。


「好きだよ」


突然の告白が奈々から言葉を奪う。
光風堂の先行きだけを考えて一心不乱にやってきた奈々が、水瀬から好かれる展開を迎えようとは、誰が考えようか。

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