クールな御曹司の甘すぎる独占愛
いや、もしかしたらその“好き”は、別の話じゃないだろうか。水瀬ほどの男が、どこからどうみても平均的レベルの奈々を好きになるはずがない。おとぎ話の王子様だって、好きになるのはいつだってお姫様。
「……あの、それは和菓子が、ってことですよね?」
そう確認せずにはいられない。信じがたい局面を迎えた奈々は、もはやそうだとしか考えられなかった。
「違うよ。奈々さん……いや、奈々が好きだ」
ちぐはぐなことを言いだす奈々を嘲笑せず、水瀬はもう一度きっぱりと言い切った。真剣な表情は、ジョークにはとても見えない。
高鳴る胸がどうにも止まらず、奈々は呼吸まで苦しくなってくる。
「奈々は、ゆっくり俺を好きになってくれればいい。でも、これからは遠慮せずにグイグイいくよ。確実に俺のものにするから覚悟しておいて」
次から次へと信じられない言葉を水瀬の唇が紡ぎだす。さらには奈々を引き寄せ、さっきよりも強く抱き留めた。
奈々はそれを聞いているだけで精一杯。ただ顔じゅうを真っ赤にして、水瀬の腕の中に収まっていた。