クールな御曹司の甘すぎる独占愛
◇◇◇
水瀬に手を引かれて連れられたのは、駐車場から二分ほど歩いた先にある懐石料理の店だった。
平屋でダークグレーの建物は、真四角の形をしており近代的。下からスポットライトが当てられて夜に浮かぶ様は、小さな美術館さながら。一見すると懐石料理の店とは思えない。
店内はブラウン系のインテリアでまとめられ、ダウンライトがあたたかな光を照らしている。しっとりとした大人の店といった感じだった。
「水瀬様、いらっしゃいませ。ずいぶんとご無沙汰でございましたね」
ここの女将と思しき四十代前半くらいの女性が出迎えてくれた。奥二重の目にアイラインをきっちり引いたバッチリメイクと、夜会巻きの髪がゴージャスな雰囲気を醸し出している。ふくよかな体形だが、薄紫の着物がよく似合う。
名前を覚えられているくらいだから、水瀬は以前からよく通っているのだろう。
「三年間、日本を離れていましたから」
「まぁ、そんなに長い期間でしたか。それはそれは大変でございました」
そこで女将の視線が奈々へ移ったので、水瀬はお互いを紹介してくれた。