クールな御曹司の甘すぎる独占愛
これはもしかしたら夢? そうだとしたら早く目覚めさせて。そうじゃないと、本気で水瀬さんを好きになっちゃう。
夢に出てくると、それまでなんとも思っていなかった身近な男性を急に意識することがある。
好意のない人相手でもそうなるのだから、水瀬だったらひとたまりもない。
しばらくして女将の依子が、スタッフを伴って料理を運んできた。
りんごのジュレにキャビアののった豆腐などの先付は、彩りが美しい。そのあとに運ばれたお凌ぎやお椀も、どれも目に鮮やかで繊細な味だった。
ただ、奈々は緊張して依子の説明はうわの空。結局、最後の水菓子にパイナップルのシャーベットが出てくるまで、水瀬とも会話らしい会話は展開できなかった。
それがまた、奈々から自信を奪っていく。
こんな私が、水瀬さんは本当に好きなの? 気の利いた話のひとつもできない女なのに……。
考えれば考えるほど落ち込む。水瀬の周りにいる女性たちは、みな素晴らしいだろうと想像するから余計だ。
「水瀬さんが女性をお連れになるのは初めてだったかしら?」
不意に依子が漏らした言葉に、奈々の耳が釘づけになる。ハッとして水瀬を見てみれば、照れたように鼻にシワを寄せていた。