クールな御曹司の甘すぎる独占愛

「何度か食べたことがありますの。ここ何年かはすっかり足が遠のいていましたけど。……あら? でも確か、あそこは奈々さんのような若い方が経営者じゃなかったと記憶していますが……」
「父は亡くなったんです」
「あぁ、それでお嬢さんである奈々さんが?」


大きく首を縦に振りながら、依子が納得する。


「お若いのに大変でしょう」
「正直大変ですが、水瀬さんがいろいろと手助けをしてくださって」
「弱みにつけこんだってわけね」


依子がふふふと笑えば、水瀬は「そんな言い方はやめてくださいよ」と眉間にシワを刻む。


「あら、悪い意味で言ったわけじゃないのよ? 落としたい相手がいたら、なりふりかまっていられないもの。ぐずぐずしていたら別の人に取られてしまうわ」
「やはりそうですよね」


そう言った水瀬の視線が向けられ、その真剣な眼差しに奈々の心拍数が上がる。さっき似たような言葉を水瀬から言われただけに反応に困った。


「そこで依子さん、ひとつ提案があるんです」

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