クールな御曹司の甘すぎる独占愛

水瀬はひどくまじめな顔をして、依子に向かって人差し指を一本立てた。その場の空気が変わった気がした。

いったいなにを言うのだろうかと、奈々も水瀬をじっと見つめる。


「こちらの店で出す料理の水菓子ですが、そこに光風堂のものを使ってみる気はありませんか?」
「えっ!?」


これには依子でなく奈々が即座に反応。声を上げながら腰まで浮かせた。

ここへは食事をしに来ただけだとばかり思っていた。まさか水瀬が営業をかけるとは……。


「こちらには和菓子職人はいらっしゃらないですよね? 花いかだの懐石料理の最後を飾るにふさわしい、美しく味も抜群な光風堂の水菓子をお出しするのはいかがでしょう」


依子は突然の提案に目を丸くしたが、腕を組み人差し指を顎に添えて思案し始めた。


「光風堂は創業百年の老舗和菓子屋。花いかだの料理に花を添えるには、もってこいだと思います。ひと口サイズの美しい菓子が、この店の器に並ぶ姿を想像してみてください」

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