クールな御曹司の甘すぎる独占愛

◇◇◇

光風堂から花いかだまでの商品の移動手段や卸値などの詳細は後日話し合うことになり、食事を終えた奈々は、水瀬の運転する車に再び乗っていた。


「水瀬さん、本当にありがとうございます。料亭に商品を卸させてもらうなんて、今まで考えもしませんでした」
「花いかだは政財界の人間も出入りする格式の高い店だけど、光風堂クラスの老舗なら負けていない。そこからもっと光風堂の和菓子が広がっていくといいと思ってね」


水瀬の横顔に笑みが浮かぶ。
水瀬は、ただ単に奈々をあの店へ連れて行ったわけではなかったのだ。光風堂の将来を真剣に考えてくれている。
とても頼もしい人を味方につけたのだと、奈々はしみじみ思った。


「でも実は、依子さんの言うとおりなんだ」
「なんのことですか?」
「光風堂のコンサルには、下心がある」


水瀬はあけすけに打ち明けた。つまり、依子の言ったように“奈々を手に入れるために、その弱みにつけこんだ”のだと。

自分は水瀬からそこまで思ってもらえるほどの人間なのかと不安になる。どう切り返すべきなのか、奈々が言葉に迷っていると。

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