国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
ラタニア城は冷たい。無機質な壁に床、綺麗に飾ってはいるけれど今まで子どもたちの笑い声が響く賑やかな教会での生活とは違い、ミリアンは居心地の悪さを感じていた。けれど、そんな場所でも目を見張るような美しい庭園があることに意外さを覚える。

(みんなどうしてるかしら……)

いきなりいなくなってしまって、子どもたちが心配しているのではないかとふと思う。仕事先の店主にもなにも連絡していない。しかし、あんなふうにロパに見限られてしまったからには、いまさら教会に帰ることなどできなかった。

(いったい私はここで何をすればいいの……? 一生ここから出られないのかしら?)

そんなことを思いながら、ミリアンは東屋のベンチに座る。そして、ひときわ美しく甘い匂いを放ちながら、夜風に揺れている薄づきの青い花にそっと手を添えて触れたその時だった。

「その花に触るな!」

「え……?」

「……って、もう遅かったようだな」

静かな暗闇からいきなり聞こえた大きな声に驚き、ミリアンはびくりと肩を跳ねさせて咄嗟に添えた手を引っ込めた。
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