国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
レイの部屋には鎮静効果のある香が焚かれていて、胸いっぱいに吸い込むと緊張のせいでうるさく鳴っていた心臓も落ち着きを取り戻す。

余計な光を遮断するようにカーテンが閉められ、部屋の中はランプの灯りだけで薄暗かった。

「失礼します」

部屋を見渡してみるが人の気配がしない。一度ここへ呼ばれて来たことはあるが、あまり間取りを覚えていなかった。先ほどセルゲイに言われた通りに左奥に視線を移すと寝室へ続くドアを見つけた。ミリアンは再び高鳴りだす胸を押さえて深呼吸すると軽くノックする。

「レイ様、ミリアンです。お薬をお持ちしました」

返事はない。何度もノックしてみるがそれでも無言だ。もしかしたら容体が急変したのでは、と不安がこみあげてきてミリアンはたまらず部屋のドアを勢いよく開けた。

「レイ様!」

「なっ……貴様、返事もなしに勝手に入ってくるな」

部屋を開けて飛び込んできたのは、着替え途中だったのか上半身裸のレイだった。

鍛え抜かれたその肉体は筋骨隆々というよりも、程よく筋肉がついていて均衡がとれている。着痩せするタイプなのか、ドキリとするほど胸板も逞しい。思わず目を奪われてしまったミリアンだったが、レイの鋭い視線にハッと我に返った。
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