国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
どの口が言っているのだ。と強引に顎を親指と人差し指で取られる。その弾みで危うく抱えている薬の瓶を落としそうになってしまった。ミリアンは身じろぐと無理矢理に顔を正面に向けさせられる。すると、その視線の先には静かな光をたたえた双眸がじっとミリアンを見据えていた。気圧されてしまいそうになるが、ミリアンは逸らすことなくその視線を見返した。

「今のレイ様はいつものお身体ではありません。ラタニア王国の王ならば、もっと自覚してください。万が一のことがあったら、この国の民をどうするおつもりですか? あまり過信なさらないでください」

「……貴様」

“過信”と言われてレイの表情に険しさが増す。それでもミリアンは唇を噛んでドアの前に立ちはだかる。

「それに聞いてもらいたいことがあるんです」

ミリアンが言うと、レイの片眉がわずかに上がる。

「昨日、温室の咲かない花が咲いたんです」

「……馬鹿な」

レイの顔が一瞬驚きに変わる。が、すぐに元の無表情に戻ってしまう。そしてミリアンの話をまるで信じていないかのように鼻で笑った。
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