国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「そなたは誤解しているようだが……単刀直入に言う。サーナを殺したのは我々、リムルではない」

「え?」

それを聞いた途端、レイは一瞬目を見開いた。自分の中でサーナを殺した人物はリムルの者だとばかり思ってきたが、今になって否定されると思わぬ困惑を生む、しかしこの男がこの期に及んで嘘をついているとも限らない。

「そんな証拠もない話をどうやって信じろと?」

「証拠などというものがあれば、とっくに貴殿に見せている。それに、ミリアンという娘に、母を殺したのは自分だと言ったそうではないか、ジェイスから聞いたぞ。いったいどういうつもりだ?」

エバートは今までずっと眺めていた城下町から視線をレイに移す。それは険しく、不可解な行動をするレイを訝るようだった。

「まさか、冷血王ともあろう者があの娘に情が沸いたなどと言うまいな? 私の愛したサーナの娘だ、私はその娘である彼女を守り保護したいと思っている」

エバートは傲慢でその息子は一本ネジが外れると気狂いのような男だ。そんな親子が統べる国に、みすみすミリアンを手放すわけにはいかない。
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