国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「偽の情報だと?」

「我々の国に害を及ぼす犯罪組織の巣窟がその村だという情報を諜報員から知らされた」


十三年前。

当時十五だったレイは、その村の印象をまだ鮮明に覚えている。美しい川が流れ、畑には色鮮やかな果実を実らせた木々が立ち並び、平和そのものの村で悪人の住むようなところには見えなかった。エバートの言う「踊らされていた」というのはいったいどういうことなのか。

「その諜報員とは?」

「我が国の諜報員だったが、どうやら金を渡されて手にした不確かな情報だったようだ。しかし、私は国王としていち早く罪人を一網打尽にするべくことを急いてしまった。その結果、まさかサーナの住む村を……」

エバートは拳を握り締め、ぐっと唇を噛んだ。己の犯した過ちをこの男なりに悔いているのだろう。
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