国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「だからミリアンを保護したいというのか? 随分と勝手だな」

レイは腕を組み毅然と振舞っていたが、いまさら知られざる過去の話を聞かされて内心動揺していた。

「ミリアンは渡さない。彼女は私がこの手で守る。貴殿の世話には及ばない」

はっきりとした口調でそういうと、エバートは肩を落とした。

「……わかっている。私の犯した過ちは決して許されるものではない。しかし、レイ。私の息子は私以上にミリアンに執着している。それに……もう気が付いているのだろう? 彼女にかけられた暗示を」

レイは今度こそ動揺を顕にして口をつぐみ、眉をひそめた。

ミリアンにかけられた暗示。それに気がついたのは馬車の中だった。いや、それよりも前だったかもしれない。
いつも宝石のように光り輝くミリアンの瞳に陰りが見えた。初めは気のせいかと思ったが、時折感じるミリアンからの殺気めいたものに、異様なものを察した。

ミリアンは何者かに暗示をかけられている。いったいどんな? そう考えているところだったが、目の前の男がその暗示のことを知っているとすれば暗示をかけた者の正体がおのずと知れた。

「くそ、やはり……あの男だったか、ジェイス」

一瞬でもミリアンから目をはなしたことを後悔した。すると――。
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