国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「なんだ、レイ。ここにいたのか」

不意に第三者の声が背後からして、レイは振り向くことなく視線を横に動かした。
ミリアンに暗示をかけた張本人、ジェイスが父の横に並ぶ。その姿はまるで悪魔の親子のようだった。

「父上。あんまり種明かししすぎないでくださいよ、楽しみが減ってしまうだろう?」

「貴様、ふざけるな。暗示を解く方法をとっとと吐け」

ぐっと唇を噛み締めると、そんな鬼気迫る表情が滑稽とばかりにジェイスがふっと笑った。それは虫唾が走るほど心底嫌な笑みだった。

「暗示を解く方法……か。教えてあげてもいいけど、きっと後悔するよ? それに君にできるかどうか……」

「私にできないことなどない」

そう言い切ると、ジェイスはおどけたように眉をあげた。

「そこまでいうなら教えてあげてもいいよ」

ジェイスはゆっくりと口を開く。

「それはね……」

そしてジェイスは楽し気にミリアンにかけた暗示を解く方法を告げた――。
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