国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「ミリアン。私だ」

数回ドアをノックする音がして、ミリアンはハッとした。

ようやくレイが来た。それと同時にこの水を飲ませるその瞬間も。この水を飲ませればレイは眠ってしまうはず、そしてその隙に……。

「ミリアン?」

「は、はい! 今、開けます」

頭の中を駆け巡る思考を一旦かき消しドアを開ける。

「お待ちしておりました」

ミリアンがドレスの両端を少しつまんで膝を軽く下げると、レイは時間が止まってしまったのではないかというくらいに瞬きもせずに棒立ちになっていた。

「レイ様?」

「あ。い、いや……お前もこうして着飾れば見られる姿になるではないか、見違えたな」

どことなく棘があるようにも思えたが、彼なりの称賛なのだろう。

「レイ様、どうかされましたか? 顔が少し赤いような……」

ミリアンの姿を見て思わず惚けてしまったなどと言える訳もなく、レイは首を振った。

「気のせいだ。話をしていたら、遅くなってしまった。すまない」

ドアを閉めて部屋に足を踏み入れると、レイはミリアンを引き寄せた。
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