国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「ジェイス、お願い……もうやめて」

涙声で訴えかけるミリアンにジェイスの表情が曇る。

「どうして? その男はミリアン、君の母を殺したやつだぞ? 憎くて憎くてたまらないんだろう?」

「……ッ!!」

ゆっくりとした口調でジェイスに語り掛けるように言われると、今までにないような強い痛みが脳内を襲った。

「あ……っ、う」

「ミリアン!」

頭を抱えて身をかがめると、レイの腕がミリアンを支え起こす。

(母を……殺した、男……)

すると、脳裏に母が殺されたあの惨状が蘇った。背中に深々と突き刺さった母の傍らに立っていた男。

憎い――。
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