極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
彼の袖をきゅっと掴んで引き止めると、彼は驚いたように目を見開いた。

けれど――。

「……悪い。最後まで育ててやれなくて」

熱のこもった大きな手で私の指先を包み込み、そっと袖から引き剥がした。

まさか謝られるとは思わなくて、たまらず唇をかみしめる。

違う、そんなことを言ってもらいたいんじゃない。

ぶんぶん首を横に振る私に、彼は憐みみたいな瞳を向けた。

「……五年間も俺の下に縛りつけて申し訳なかったと思っている」

なにを誤解しているの? 彼の下に居座り続けたのは、私が望んだことなのに。

「そうじゃなくて……!」

彼の存在は圧倒的だった。私の人生五年分、彼色に染められてしまうほどに。

もちろん、仕事の上でも、ひとりの男性としても、特別な……。

「神崎さん……私っ……」

ぎゅっと近くにあったシーツを握りしめて、この気持ちのやり場を探す。

私はなにを言おうとしているのだろう。なにを言えばこの気持ちはすっきりするのだろう。

自分でもよくわからないまま、じっと彼の瞳を見つめ続ける。
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