極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
「……どうして、ここにいることがわかったんですか?」

「玲奈が――水上さんが、突然、お前と別れろなんて言い出したからおかしいと思ったんだ。お前にも同じことを言ったのかと問い詰めた」

彼はそう答えると、自信の額にかかった髪をうっとおしそうにかき上げた。

よく見れば髪やスーツが水に濡れている。雨の中、本当に慌てて来てくれたのだとわかった。

「マンションのコンシェルジュにも問い合わせて、俺の部屋のセキュリティに解除された形跡があるか調べてもらった。案の定、誰も家に入った跡がなかったから、きっとお前の性格的に、思い悩んで自宅へ帰ったんじゃないかと踏んだんだ。急いでここに来てみたんだが、正解だったな」

彼は近くにあった私のバッグを手繰り寄せ、自分の肩にかけると、私を勢いよく抱き上げた。 

「……帰るぞ、三花。誰になにを言われようと、二度と俺のそばを離れようなんて思うな」

それは蜜のように甘く、棘のように鋭い脅し文句。ドキリと鼓動が跳ね上がって、精悍な眼差しに捕らえられる。
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