はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
「バレたら無理矢理結婚させられるのに、めでたくなんか無い!」



目の前のお弁当箱を、坂下に向かって投げつけたい気持ちだったけど…。



「誰にも祝って貰えないのは、寂し過ぎるでしょう?

せめて、私だけでも祝って差し上げたかった…。」



坂下の言葉を聞いたら、そんな酷いコトできなかった。



私が坂下の“娘”でいたい気持ちと同様、坂下も私の“パパ”でいたいんじゃないかって感じた。



『想い』のベクトルは、違うのだろうけど…。



「ここで、ご飯食べて良い?」



「では、私もここで食事をします。」



坂下はそう言うと、お弁当箱を広げた。



窓の外は今にも崩れそうなカンジで薄暗くなっていく中、お赤飯を口に運ぶ。



「美味しい。」



私が呟くと、坂下は嬉しそうな表情をした。



「此処で過ごしたことは、口外しないでください。」



昼休みが終わる鐘の鳴る10分前、坂下が部屋を出ようとした。



やっぱり、一度流された愛人の噂は、簡単には消えないんだろう。



私はその背中に、声をかけた。



「私たち、前みたいに戻れないかな?

パパ…。」



坂下は振り向くことなく、頭を振ると部屋を出た。



悪意の噂さえ流れなければ、今でも“ワカ”って呼んで貰えたかもしれないのに…。







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