はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
「部活、全然来てないんだって?」



野田先輩がボソッと呟いた。



確かにそうだけど、同じ幽霊部員に言われたくない。



「それって、俺のせい…とか?」



「は?」



何で、野田先輩が絡むんだろ?



「来なくなったの、1年の終わりって聞いてるから…。

俺が言ったこと気にしてるんだったら、悪かった。」



あの日は、色々とありすぎた。



私が部活に行かなくなったのは、坂下を避けてたからなんだけど…。



「漱石から、聞いてない?」



「ソーセキ?」



そっか、あだ名じゃ分かるわけない。



「先輩を呼び出した、夏目のこと。」



「あぁ、あの人。

翠子…いや、彼女ん家の使用人ってことしか知らない。」



ん?ミドリコ…?



「まさか、聖女のミドリコが告った相手って…野田先輩!?」



「翠子の知り合い?」



「一方的に…です。」



そう言い終わった時、近くに人の気配がした。



「お喋りは、控えていただけますか?」



いつものように笑みを浮かべた表情で坂下が言ったけど、その目は決して笑っていなかった。



坂下が私たちから離れた時、野田先輩がチラチラと私を見る。



「部活のことだけど、兄が亡くなって家がゴタゴタして行きそびれただけ。

別に、先輩のせいとかじゃないから。」



それだけ言うと、坂下に怒られないようにすまし顔で前を向いた。







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