はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
しばらくして自分の番になり、筆を手にする。



思っていたよりも、右手への負担が大きい。



だけど、書き終わるまではロザリオが私の手を護ってくれる気がした。



もうちょっとで書き終えようという時に、私に向かって何かが飛んでくるような気配で顔を上げると、それは顔面に当たった。



ぬるっとした感触と、臭いがする。



足元の…紙の上に散った残骸を見て、投げつけられたものが生卵だと分かった。



生卵が飛んできた方を見ると、夏に私をヘコませた1年が投げたんだと分かった。



彼女のそばで、3年が笑う。



どこまで嫌がらせすれば、気が済むというのか?



筆をその場に転がすと、私は講堂から飛び出した。



ヤダ…。



もうヤダ!!



こんな目に遭うなら、端から参加しなきゃ良かった…。



近くの水道で卵を洗い流し、1人になれる場所を探しにあてもなく歩く。



気づいたら、屋上につながる階段のとこにいた。



去年も、ここへ逃げ出したんだった…。



「進歩ないなぁ、私…。」



私は座り込むと、涙で濡れた頬を拭った。



あ…、まだ卵臭い。



しばらくして、誰も来ないような静かな場所に足音が聞こえてきた。



「やはり、ここでしたか…。」



その声に顔を上げると、ドラキュラの扮装をした坂下だった。



「1人にして。」



「お断りします。」



そう言うと、坂下は私の隣に腰かけた。








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