はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
「私が、目を光らせていれば良かったのですが…。

桐生さんには、申し訳ないことをしてしまいました。」



3年らの、嫌がらせのことを言っているのだろう。



「先生は受験生抱えて忙しいし、部活まで手が回らないことくらい…分かってる。」



口ではそう言うが、ホントはずっと庇ってくれるの待ってた。



だけど…『もっと構って!』なんて、今の私には言えない。



父の相手が、坂下の奥さんだと知ってしまった今は…。



私の腹違いのお姉ちゃんを、坂下はどんな気持ちで育ててたんだろう?



とか、



お姉ちゃんにそっくりな私を、どう思っているんだろう?



とかが、ぐるぐる回る。



私の気持ちを察してくれたのか、坂下が頭を撫でてくれた。



「実は桐生さんに嫌がらせをした生徒を厳しく罰しようと思ったのですが、喧嘩両成敗ということになってしまいました。」



私は、手を出してないのに?



「詳細は、野田くんに聞くと良いでしょう。」



「野田先輩、何…。」



何をしたのよ!!



怒鳴りかけたところで、坂下が人差し指を私の唇に当てた。



「少し、隠れん坊しましょう。」



そう言うなり、私の身体を引き寄せ、肩にかけたマントですっぽり包む。



この人は、私の邪な気持ちに全く気付いていないんだろう。



じゃなきゃ、こんなことしないよね…。



ドキドキと高鳴る胸の鼓動が聞こえやしないかと思いながら、マントの隙間から坂下を盗み見た。



坂下は自分の唇に人差し指を当てると、静かにするよう念を押した。









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