だから何ですか?
「何が厄介なんですか?」
声の響きに反応し身を起こして捉えた姿は、今日もまた他者を和ませる空気を纏う愛らしい存在。
どうやら俺のボヤキはブースの外まで漏れていたらしく、ヒョコッと覗きこんできた彼女はクスクスと笑いながら突っ込みを入れてきた。
「おー・・・小田っち」
「これ、指定のロゴだそうです」
「了解〜」
「珍しいですね。伊万里さんが作業中にこんな風に集中切れてるの。そんなに手が止まる程厄介な仕事なんですか?」
「あー、いや、厄介って言ったのは別件」
かと言って、さらりと悩みを口に出来ないのは、つい最近まで絶妙な距離で意識しあっていた相手だからだろうか?
いや、別にどちらもモーションをかけた訳じゃなし、それを匂わせる様な会話だってしていない。
ただ何となくお互いにきっと好きだよな。と、やんわり意識していた関係なだけであって。
彼女が出来た。と打ち明けようが後ろめたく思う事はないといえばないのだが。
でも、現状特別宣言する場面でもないしな。
言おうかと口を動かしかけたけれど思いとどまりすぐに閉ざす。
「・・・際限ないなぁってね」
「何がですか?」
「・・・・小田っちって可愛いよな」
「はっ!?何ですかいきなり、何もいいもの持ってないですよ!?」
「うん、安心の可愛い反応だよな」
「・・・伊万里さん?なんか私で実験しました?」
「いや、嘘は言ってませんよ?」
「もういいです」
うん、その不貞腐れましたと言うか、冗談交じりのやり取りさえお互いを掴んだ上で安心あって可愛いと思う。