だから何ですか?
そんなタイミングを図った?
「伊万里さん、」
逸れた意識を引き戻すよう。
なのに捉えるのはガラス越し映る亜豆の顔で、視線すら未だ窓の外だ。
はっきり聞こえたのに聞き間違いかと思ってしまいそうな程に亜豆の視線がこちらにない時間。
それでも、
「伊万里さん、」
「うん、」
「伊万里さん、」
「フッ、だから、なんだよ?」
「伊万里さん・・・」
「ちゃんと隣にいますけど?」
「・・・それが、・・・夢みたいで」
まるで、存在を確かめるような呼びかけ。
何度もはっきりゆっくり。
それに応えてフザけたように笑えば、噛みしめる様に弾かれた彼女の小さくも歓喜に満ちた声。
夢見る少女の様。
今時、作ったキャラの女でも夢見がちなそんなセリフは言わないと思うのに。
更に言えば見た目の印象からはそんな事を言わなそうな亜豆だ。
吐き出されるのは紫煙混じりの現実的な言葉だけのような印象なのに。
「隣にいるのが・・・夢みたいで」
「・・・」
「だって・・・つきあえるなんて思ってもなかった」
「・・・」
「ただ、好きで、見ているだけでよくて、好きだって・・・知ってもらえるだけで充分で・・・幸せで」
「・・・亜豆、」
「でも、・・・幸せじゃなくなった」
不意の沈黙の間にゴウンゴウンと観覧車の可動音が耳にも体にも響く。