だから何ですか?
駆け引き上手なお嬢さんの一言であるなら後の時間を盛り上げるようないけずだと割り切ってこのやり取りも愉しめるだろう。
だけどこの場合、そんな駆け引きなんて一切頭にないであろう亜豆相手だ。
本人もそれを示す様に軽く必死さを見せる真剣な目で俺を見つめて正論をぶちかましてきているくらいで。
それに対して、今の俺は立ち向かう術を知らない。
本当に勘弁してくれ。
そんな感覚でもどかしい葛藤をどうにか宥めようと自分の顔を片手覆って深く長い息を吐く。
確かに場所が場所だし、出来なくもないけど時期が時期。
夏の軽装と違ってがっつり着込んで簡単に着崩せるでもなし。
場所を変えるにしても亜豆が拒んでいるのにホテルに連行して強行するのもどうなんだ?
なんとか理性を引き戻して、どうしようもない展開だろう?と自分に言い聞かせるような問題点をあげての強制賢者タイムと言うのだろうか。
それでもなかなか引いてくれないというのが男の厄介な煩悩というもの。
諦めきれないという感情を示す様に、未だ亜豆の体を抱き寄せている腕は正直だ。
自分では必死すぎて気がついていなかったけれど、俺が沈黙になってなかなかの時間が過ぎていたんだろう。
「っ・・・すみません、」
不意に落とされた謝罪の声音に、なかなか抑えきれなかった煩悩がストンと静まったのが分かる。