だから何ですか?




気がつけば発情している間にてっぺんを過ぎていたらしい観覧車の景色。


ジワリジワリと下降する動きに合わせて自分の欲求も一緒に下がれと思いながら外の夜景を見つめていれば。



「・・・・・予約、」


「・・・・・・はっ?」



不意に響いた声に意識を戻され、視線も戻すと同時に腕の中の亜豆がモゾリと動きを見せて体を離す。


言葉の意味も分からぬ状態であるから亜豆の行動のままに任せて見つめていると、見惚れるような所作で片方のピアスを外し、それを俺の掌に乗せてキュッと握らせる。



「・・・予約、」


「えっと・・・」


「それ、予約券って事で」


「・・・・」


「まぁ・・・予約なんてしなくても・・・伊万里さんのモノなんですけどね」


「っ・・・だから・・・それだよ」


「・・・どれですか?・・・と、言うか、何が?」



本気で訳が分からないという様なキョトン顔はもう慣れた。


もう、天然無自覚魔性女でいい。


どうせそれは俺にしか作用しないはずの姿なんだから。



「亜豆が好きってだけ、」



その感情だけ。


でも何よりも重要で芯である感情だと思う。


とにかく自分のモノで自分の腕の中にある。


それが今一番の重要な事だろうと噛みしめながら亜豆を抱き締めた残りも僅かな密室の時間。




< 156 / 421 >

この作品をシェア

pagetop