だから何ですか?





こ、怖ぇぇぇぇ。

下手な人間がキレるより怖いけど!?


と、噛みついたまま物申す様に見つめ上げてきている獣のブルーアイには完全にこちらの憤りなんて押しやられる。


それでも本気で威嚇するように唸ったり牙を剥いてはいないのだ。


ただ『ヤメロ』と言いたげに力強く噛み戻すだけ。



「チビ。ステイ!」



どうしていいものか分からず不動になっていれば、凛と響いた静かな声音に、自分を拘束していた力は離れて大きな犬はその場に座ってピタリとしている。


そんな指示を出したのは亜豆で、慌てるでもない声を響かせるとようやく立ち上がってこちらに近づき未だ海音を掴んでいた片手に指先を這わせて絡めとると、



「無駄」


「はっ?」


「海音君に感情的になっても無駄」



そう言いながら柔らかい力で海音に絡んでいた自分の指先を解かれて、代わりに絡んできた亜豆のか弱い力に引かれてそのまま足を動かし始め。


海音と言えば何食わぬ顔でバイバーイと手を振り煙草を噴かすだけで、そんな姿に小さく舌打ちだけ残してリビングを抜けた。




< 172 / 421 >

この作品をシェア

pagetop