だから何ですか?
亜豆が最初に言ったように、俺はすでに亜豆を疑う感覚を持ち合わせてなかった。
亜豆が俺を好きだと言う言葉や気持ちに揺るぎがないのは己惚れてしまうくらいに自分に絡んで沁みついている。
煙草の煙の様に。
一度沁みついたら抜けきらない。
そして事情を知ってしまえば結果・・・亜豆の極論にたどり着くのだ。
後に続くのは微々たる補足の確認になるだろう。
「・・・海音はここに、」
「住んでませんよ。来るのは金曜の夜。週末をここで過ごすような感じですかね」
「・・・そっか」
「以上ですか?」
「えっ?」
「不満。言い尽くしてスッキリしました?」
ああ、この笑顔は少し・・・亜豆なりに意地悪く作った物だ。
目を細め弄るように笑う表情がどことなく海音に類似すると思ったのは今の話を聞いたせいなのか。
煙草の火の着け渡しや、よくよく見たら吸い方も似ているんじゃないだろうか?
きっとそれはどうしても俺が介入出来ない過去の時間の産物で・・・。
ああ、でも・・・不満。
そう思って無意識にしかめっ面に切り替わった表情は感情に素直だ。
すでに俺にない亜豆の視線は灰皿に落ちて、吸い終わった煙草の処理に意識は集中。
俯き気味の顔は睫毛の長さがよく分かる。
その顔を確認してから捉える全体像は改めて無防備で・・・無防備すぎて。