だから何ですか?
そんな事を感じていれば当然に真顔で無言になっていたんだろう。
俺の顔を覗き込んできた亜豆が『ふぅ』とあからさまな息を吐きだすと、気つけの様に俺の鼻をギュッと摘まんでくるからさすがにハッとして意識の回帰。
「勝手に感傷に浸らないでくださいね?親がいない子供なんて腐るほど世の中に居るんですから」
「おまっ・・・言い方。腐るほどって」
「だって本当に、理由様々、生い立ち様々溢れてて、みんながみんなそんな生い立ちにドラマチックな悲壮感とか抱いて大きくなってませんから」
「いや、別に悲壮感とか抱いて同情したりしてたわけじゃねぇよ?むしろ今までの生い立ちあっての今の亜豆だろ?俺が好きなのは今の亜豆なんだからそうなった過去にいちいち悲観的なもの感じるかよ」
「・・・・・伊万里さん、」
「ん?」
「惚れそうです。キスしていいですか?」
「フハッ・・・お前・・・・・、どーぞ」
真面目な雰囲気なんて一瞬で飛んで、真顔なのにその双眸には嬉々とした揺れを見せて俺に迫る姿。
そんな亜豆に苦笑いでクスリと笑い、『どーぞ』と言いながらキスしやすい状態に体を折り曲げる。
スッと伸びた亜豆の手が両頬に添えられ、風に冷やされた指先が冷たいと感じつつも拙いキスの感触に緩和される。