どうしたって期待したい!!
そして激情する彼女と違って水城くんはどこまでも冷静で平淡に受け答えをしているに過ぎない。
多分、何で怒ってるんだろう?くらいの感覚で、怒ってる子供を受け流す大人に近い。
でもね、水城くん、無茶苦茶だけど世間一般の乙女心代表は彼女脳様な感じだと思うのだ。
しかも今日はクリスマスじゃん?
余計に夢あるデートに期待は膨らんでいたんだと思う。
それを正論でぶち壊された彼女のプライドはズタズタだろうか?
お気の毒様と一応同情は働くから不思議だ。
綺麗な顔が憤怒と羞恥で歪んでいる。
そんな彼女に特別へりくだって取り繕ったり謝ったりする彼でもなくて、
「で?……どうするの?まだどっか行く?」
「っ……行かないっ!!馬鹿じゃないのっ!?」
み、水城くぅぅん……強いよ…本当にあんた強いよ。
ってか、こんな事あってもまだ律儀にデート続ける気はあるとか!
でも、ここまでプライドズタズタになった女の子が好意を継続する筈がなくてね……
「最っ低!!本当に最っ低っ!!無理っ!!」
「……はぁ、だから言ったじゃないか。俺はきっと期待に添えないと思うって。それなのに何度も声をかけてきたのはそっちでしょ?」
「なによそれっ、私の事好きじゃなかったみたいにっ!」
「………好きじゃなかったのはお互い様だろ?」
「っ……」
「キミが求めていたのは俺じゃない。優越感だ。誰にも靡かなかった相手の隣に自分が並ぶっていう優越感。俺個人が好きなわけじゃない。価値があったのは俺の隣っていう勝者の席でしょ?」
「なっ……はっ?……」
「キミの俺への感情は『好き』じゃない。俺に求めているのも好意じゃない『便宜』だ。自分に都合が良く見栄を張れる存在が欲しかっただけ。……子供の方がよっぽど純粋で無垢な『好き』を知ってるよ」
パンッと大きく音が響くのは必然の展開だっただろうか?