愛してるからこそ手放す恋もある
通りでタクシーを待ってる間、寒さで凍える手を擦り私は自らの息で温める。
「なかなかつかまりませんね?ボス寒いから、やっぱり店に戻って、タクシー呼びましょう?」
「歩こう?」
「駅まで歩くんですか?」
するとボスは「しかし寒いな?」と言って、片方の手袋を私に渡した。
え?
使えってこと?
そしてもう片方の私の手を取り、自分のコートのポケットに入れた。
「こうしてると手も心も温かくなるだろ?」
「ぷっ…」
「何が可笑しい!?」
「あっすいません。ボスがそんなロマンチックな事言うなんて思わなかったので…」
「冷鉄の男だからか?」
最近ではボスの事を鉄の男から、冷鉄の男と社員の間で呼び名が変わってきていた。
以前ボスの歓迎会(歓迎会と言う名のボス主催の親睦会)で名刺を差し出した社員は以前の移動とは違って、秘書だった女性を営業部へ、そして営業だった男性社員は倉庫へ移動になったりと全く違う部署へ移動になったからだ。
ボスが言うには、努力もせずに他人(私)の力を借りてまで生き残ろうとする者は先が見えてると言う。ましてや仕事に色気を持ち込む女は信用ならないと言う理由らしい。
分からなくもないが、みんなも自分が幸せになることに必死なのだ。
「ウフフ…そうですね?でも冷鉄の男ってのも好きですよ?私。 それよりすいません。甥っ子にプレゼント頂いてありがとうございました。とてもよろこんでました。それにうちの家族しゃぎすぎて…お疲れになりましたよね?」
誠以外の男の人が私を訪ねて家に来たのは、始めてで、家族皆が驚いていた。私がやっと前を向けたと思ったのだ。お義姉さんは『良い男じゃない?』と良い、お母さんは、『仏壇のお父さんに報告しないとね!』とみんな何か誤解していた。
「いや、楽しかった。以外と良いもんだな?こういうクリスマスなら」
「え?」
「これまでのクリスマスは仕事関係のパティーばかりだったし、特に良い想い出なんてなかったが、家族と過ごすクリスマスは良いもんだな?俺も欲しくなったよ家族」
「そう思って頂けたなら良かったです」
「ああ、今年のクリスマスは好きな女と一緒だから特別なんだろうな?」
「………」