愛してるからこそ手放す恋もある
「泣くな!!」
え?誰?顔を上げれば怒りを露にした菱野部長の同伴者の女性だった。
「あんな男のために泣くな!!」
「由美ちゃん、落ち着いて?佐伯さんがびっくりしてるでしょ?ごめんね?僕の奥さん浩司にはいつも厳しくて…」
「いつまでも、あんな馬鹿女の事、引きずってるからこんなことになるんでしょうが!?」
「由美ちゃん、もうそのくらいにして体に障るよ?」
由美ちゃん…
会社では仕事の出来る男と言われ、いつも凛々しい姿を見せてる部長が…自分の妻を人前で、由美ちゃん…?
嘘…でしょ?
溢れていた涙は驚きとショックでいつの間にか止まっていた。
「祐司も祐司よ!浩司がヘタレだってちゃんと話してたの!?ちゃんとフォローもしてたの!?」
菱野部長のしたの名前、祐司って言うんだ?
「詳しい話しは…」
「じゃ、祐司の責任でしょ!」
「はい……」
由美さんに怒られた菱野部長は子猫のように小さくなっていた。