オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
佐々はしばらく携帯を手の内で転がしていたけれど、

結局我慢できなかったんだな。

画面を開いた。

ここら辺のヤバい連中が伝令用に持ってる、警察にも足がつかない、契約者不明の古い携帯。

ガラケーだから、かなり画像も荒いし、写メも小さい。

なのに、そんな愛しそうに何度も見るなよ。

羨ましくなるだろ。


「……へぇ、重症だな。マジで惚れてんのか」

「……まあ、そうみたいです」

「あの伊都がねぇ~……こりゃおじさん楽しみだ」


そう言って、司さんは出口を顎でさした。

そろそろ、連れ出せの合図。


「伊都のこと、ちゃんと見張ってろよ?成久」


目が、笑っちゃいない。


「ハイ」


店の外に出ると、早々に頭も体も軽そうな女が声をかけてきた。

佐々はチラリとも見ない。

本当は、花美ちゃんのこと、ただの意地だとばかり思っていたんだ。

女に拒否られたことないから、珍しいんだろうって。

でも、俺の完全な分析ミスだった。


……だから、


この数時間後、俺専用の携帯に送られてきたメールを見て、俺は思わず携帯を落としたんだ。

手が滑ったんじゃない。

震えた。

落とした携帯を拾い上げるのに伸ばした腕に、


――……鳥肌が立ってる。


着信音に叩き起こされて、まだ体はベッドの中だ。

でも、だからって、寝ぼけているわけじゃない。


………………………
Frm 神埼亮
Sb (non title)
………………………

俺からは送れません。

ガク((( ;゚Д゚)))ブル

成久さん、お願いします。
………………………


添付された数枚の写真にアパートが映っている。

玄関前に、黒のライダーズジャケットを着たガタイのいいオトコ。


「…花美ちゃん……」


……が、オトコを出迎えるようにドアを開けて、二人して部屋の中に消えた。

オトコと一緒?


「……マジ…かよ」


ヤバイ……


――佐々……


頭の中が真っ白になった。

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