オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
籐堂さんが言うには、時々ある簡単なゲームらしい。


『ウサギを捕まえろ』


“ウサギ”は私だそうだ。

昨日、籐堂さんが言ってた、『追われてる』ってのは、このことだったのか……


「神崎ってのは、まあここら一帯の暴走族のアタマだな。下っぱの連中が躍起になってあんたのこと探してんぞ?」


「…はぁ……」

「菅原は、まず表に出てこないんだが、今回は珍しいな。メンバーじゃねぇよ」

「…はぁ……」

「ここら辺の情報を仕切ってて、くだらねぇ連中に入れ知恵してやがる。こないだ株で儲けさせてもらったって、どっかのチームのOBが言ってたな。頭が良いだけにタチが悪い」

「はぁ……」

「どっちかのオンナかと思ったんだがな。違ったか」

「はぁ……」


“はあ…”しか、出てこない。

そんな私の様子に呆れた表情を浮かべながら、それでも籐堂さんは続ける。


「追われる心当たりがないんなら、どっかで目ぇ着けられたんだろ?美人サンも大変だねえ~、どおすんだ?」

「ど、どおって……」

「とにかく、今出てったら確実にヤバイぞ?……霧里花美チャン」

「……」


予想外の展開に、特に良くもない頭がついてこない。

写真と一緒に名前もばら撒かれてるみたい。


「……昼間は目に付く。暗くなったら家まで送ってやるよ。さて、そこで最後の質問だ」


籐堂さんがニヤリと笑うと、あっという間に、目の前の世界がひっくり返った。


ドンッ!


背中に鈍い痛みが走る。

後頭部がズキズキする。


――え?


座っていれば、見えるはずのないアパートの天井が見える。

蛍光灯がユラユラゆれてて……

ようやく、自分が横倒しにされてるのに気づいた。

両手首はきれいに重なったまま、頭の上で動かない。

抑え込まれてる。


「さて、ヤるか?」

「!!」


ドクンッッ!!


心臓が、ありえないくらい跳ねた。
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