オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
彼に会うまで……


“助けて”


……と、願うところは、

どこの誰というわけじゃ、なかった。


“助けて、誰か”


だれでも、いいから……


でも、……今は、

お日様に、キラキラ揺れる薄茶の髪が見える。


ツゥ……


涙が、頬を伝った。

籐堂さんは眉すら動かさない。

……でも、


「泣くなよ。俺はやさしいぜ?」


『泣くなよ……』


あの日、校門前でオトコ達に絡まれた時……

駆けつけた彼は、そう言って、まるで、彼のほうが泣きそうな顔で、壊れるほど強く、

なのに、恥ずかしいほどやさしく私を抱きしめてくれた。


――佐々くん……


心の中でも、呟かないと決めてた。

勤めて、思い出さないようにがんばった。


だって……

ほら、

もうダメだ……


「ふ……ぅ…ぅう……」


止まらない涙にのせて、想いが溢れる。


佐々くんがスキ……

佐々くんに会いたい……


――佐々くんに会うまで……


いつも、私のそばには誰かいて、

それでいて、誰もいなかった気がする。


――佐々くんに会って……


こんなにも、離れてるのに、

離れたはずなのに…


まだ、すぐそばにいるような気がする。

こんなにも胸か苦しい。


今まで、こんなコトなかった。

知らなかったの。


逃げられないんだ。

このキモチからは……


逃げて、

逃げて、

逃げ切れないまま、


もう、後がない……

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