オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
「泣いてちゃわかんねぇ」

「……はい…」


涙をすすり上げながら返事をする。

思ったより冷静な自分の声に、落ち着きを取り戻す。

私を溺れかけさせた、濁流のような激しい劣情は、佐々くんを思い浮かべただけで、跡形もなく消えてしまった。


「……やさしくてもダメ。……籐堂さんとはしない」


涙を止められないまま、ただ、真っ直ぐ藤堂さんを見据えて言った。


だって、もうわかっちゃったんだもん。

自分の気持ちに、背を向けてもムダなんだって……


「……面倒なこと、全部引き受けてやるって、言ってるんだぞ?」

「うん。それでもダメ」

「そうか」

「だって、籐堂さんのこと愛してないもん」


――佐々くんじゃぁ、ないもの……


心の中で呟いたその言葉に、泣いてるくせに笑ってしまった。

なんて、矛盾。


“好きな人とはシない”

……じゃなかったっけ?……私。


「なるほど!」


籐堂さんも、口角を少しだけ上げて笑った。


「合格」


そう呟くと、籐堂さんは押さえつけていた手を放し、私をあっさり開放した。

さっさと、胸ポケットからタバコを取り出しちゃって、吸い始める。


「試すようなことして悪かったな」


――……?


何を言われたのか、すぐにはわかんなくて、横たわったまま顔だけ動かして、籐堂さんの口元に視線を移した。

ゆらゆらと……

吐き出された白煙が天井に吸い込まれるように登っていっては、消える。

……のを、数秒、ぼんやりと見てた。


――……試すって……


「で、ど~すんだ?お前、どっちみち見つかったら“愛してないやつ”にヤラれちまうぞ?」

「……?」


――……え?……あ……っ


「ああああ~っ!!なんて酷いコトすんデスかあっ!!」


ようやく理解した!!

勢い起き上がって、詰め寄る。


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