オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
<side佐々>


「お帰り~!伊都!!」


数日ぶりに自宅に戻ると、怒るどころか、珍しく母親が出迎えに来た。

夜中の2時だってのに……

超、笑顔。


キョロキョロ……と、俺の周りを見回し始める。


「なんだよ」

「花美ちゃんは?ねえねえ、一緒じゃないの?」

「…あのなぁ……」


健全な高校生の男女が、数日も一緒に過してるほうが、普通心配じゃねぇの?

ふと見ると、母さんの指にピンクのミュールがユラユラ揺れてる。


「あ、コレね、花美ちゃんに似合いそうだな~って?」


部屋に入ると、さらにアタマが痛くなった。

狭くもないオレの部屋半分くらいが、プレゼントの山。

ワンピースだとか、花だとか、パンプスだとか……

何が入ってんだかわかんねぇ箱も、とにかく多い!


「全部花美ちゃんにってワケじゃぁないのよ?伊都の分もあるって!」


言うわりに、パッと見、オトコ物は一個もない。

花美がいなくなったことを母さんは知らない。

オレの顔を見るたび、


“今度はいつ来る?”だの、

“元気にしてる?”だの、


うるさくて堪んねぇ……

花美がウチでぶっ倒れたとき、あんなに取り乱した母さんを初めて見た。

もともと姉御肌で度胸もいい。

そりゃ、人並みに悲しそうな顔ぐらいはするけど、オレが問題起こして警察沙汰になったときだって、基本、鉄拳制裁だし?

あんなに真っ青になって、泣き叫ぶようなことはなかった。

だから、今まで気になってて、聞けなかったことを聞いてみる。


「なあ、なんでそんな花美のこと気に入ってんの?」

「花美ちゃんのこと、ちゃんと守ってあげなさいよ?伊都」


ゴソゴソと、持っていたミュールを箱ん中に片付けながら、何気なく言う。


――軽く流してんじゃねえよ。


「はあ…、答えになってねえ……」

「私はあんたを信用してる」

「……」


手を止めて、今度は真顔でオレに向き直る。
< 169 / 229 >

この作品をシェア

pagetop