オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
「おお~ディアナ!なんで伊都に話さん?花美はお前さんが親友の娘だろう?」

「その…ディアナっていうの、やめて下さいません?お義父さん。まあ、彰人さんの意思じゃありませんでしたから、私からは言えませんよ」


母さんが、花美の母親と親友?

母さんを見ると、ジジイが言ってくれて助かったとばかりに、すっきりした顔でオレに向かってウインクして見せる。


「はははっ!彰人は平和主義だからのっ!」


こんな面白いことはないとばかりに膝を打つと、ギロリと、ジジイがオレを睨んだ。


「剣菱と喧嘩する気かあ?伊都っ!」


その、老人とは思えない怒号と眼力に、冷や汗が背中をつたう。

声が出ない。


――クソッ……


足が、床に根が生えたみたいに、動かない。

剣菱と喧嘩?

そんなんじゃ、ねえっ!

家なんか関係ない。


――ただ……、オレは……


視界の端に、硬い表情の母さんが見えて、


――しまった……


無意識にジジイから目を逸らしたことに気づいた。


「……く…っ」


もう一度、戻そうとして、戻せず、そのまま落とした視線……


――クソッ……!!顔が上がんねえっ!


「お前は佐々の跡取りぞ!よう考えんかっ!!」


ビクッ!!


恫喝に全身が震える。


「……!?」


――……違う。


手の中で潰しかけてた携帯が振動して、止まった。


――…成久……?


二つ折りの携帯を開くと、液晶に映し出されたメールタイトルに『冷静に』の3文字。

あまりにもタイムリーなその言葉に、


「……はは」


金縛りが解けた。

全身の力が抜けていく。

成久、あいつ予知能力あんじゃねぇの?
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