オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
「なんぞ、おかしいことがあるか、伊都!」


突然笑い出したオレに、ジジイがなんか文句を言っているが、後回しだ。

メールを開くと、花美に会いに行くかどうか、もう一度返事をくれと書いてあった。

添付されてる画像には、


花美と、

オトコ……?

が、写ってる。


バキッ……!


――あぁ……、やっちまった。


キレイに真っ二つになった携帯を、とりあえずジーンズのポケットにしまうと、

オレはジジイに背を向け、ドアに向かって歩き出した。


「予定変更。もう出るわ」

「どこ行くつもりぞ、伊都。爺との話はまだ終わっとらんぞ?」


怒気を含んだ低い声で、ジジイがオレを呼び止める。


――めんどくせぇな…


オレの中では今の数秒間のうちに、そのハナシとやらは片が付いてた。

その証拠に、オレは声の主をなんなく振り返る。


つまり、こういうことだろ?

オレが花美を手に入れらんねえって事はさ、

あいつの隣に、オレじゃないほかのオトコが寄り添うってことだ。

さっきの画像みたいに……だ。

他のオトコが花美に触れる。

ムカついても、こないだみたいに、相手を殴り倒す権利もない。


――想像しただけで、怒りで目の前がくらみそうになるな……


それがジジイの言う、“よく考えんか”の答えなら、クソッくらえだっ。


「ジジイッ!」

「なんじゃいっ!」

「そろそろボケがきたんじゃねぇのか?らしくねぇコト言ってんじゃねぇよっ、欲しいもん手に入れんのに、喧嘩して何が悪りいってんだ!」

「そら、餓鬼のやりかたじゃろ!お前いくつぞっ?もうちっと大人にならんかっ」

「佐々のご隠居はオトナだからなあ~、勝ち目がねぇから、剣菱と喧嘩はできねぇってわけだ」

「伊都…っ、喧嘩は相手を間違えちゃいかん。3ヶ月待て。剣菱も姫も手に入れてやるぞ?」

「ガキにオモチャ買ってやるってか?大人になれって言うワリに甘いじゃねぇか」

「ほお!なかなか言うの~」


ジジイは心底感心したように、腕を組むと、ギシリ…と、ソファーに深く腰掛けなおした。

俺とのやり取りを、楽しそうに笑ってやがる。

冗談じゃねえぞ。

言いくるめらんねえように、こっちは必死だっての。

全くそっくりだよ。

親子共々、何考えてんのかわかんねえ狸だ!

母さんを見ると、さっきの硬い表情はどこへやら、

“その調子だ”

とばかりに、女神の微笑み。


――まかせとけって…


オレだって、これだけは誰が何と言おうが譲らねぇ…


「ジジイ、勘違いすんなよ?オレが欲しいのは花美だ。剣菱はいらねぇ」


それだけ言うと、部屋を出た。

背中にジジイの高笑いが聞こえる。
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