オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
まったく…、いずれオレもあんなんになんのか?

考えただけで、気分が滅入るな。


まだ、薄暗い夜明け前の道を歩きながら、ぼんやり思った。


オレは、どおせガキだ。

佐々の跡取りって言ったって、今はまだ何の権限も持ってないんだ。

なら、ガキでいられる間は、

ガキはガキらしく、ガキの方法でやらせてもらう。


成久にメールすると、

“俺も行く”

と、即答メール。

返信を待ってたんだろう。

心配してくれんのは、ありがたいんだけどさ、

オンナが友達つれて、告りに来るようなマネできるかよ。

冗談じゃねぇっつの。

何度かメールでやりあって、結局、直接かけてきやがった。


“頼むから慎重に行動してくれよ?”

“花美の前で、二度と殴り合いはしねぇよ”


この一言が、効いたらしい。

“約束だからな”

とのタイトルと共に、写ってたアパートの住所と、ご丁寧にマップまで送られてきた。

ここから1時間とかからない場所だ。


――オトコと一緒だったか……


自分自身、意外と冷静で驚いてる。

もっと、キレてもいいと思うんだけど、


――なんでだ?


理由を見つけられないまま、結構歩いた。

気づくと、ついてたはずの街灯が消えてる。


やや高台のここからは、朝もやのなかの街が一望できた。

まだ日の出前。

東に臨む海は、その水平線の、まさに線の部分だけ糸のように輝いている。

太陽の隠れ処を中心に、コンパスで円を描くように白く塗り替えられていく夜空。

天球とは上手いこと言ったものだ。

その球の左端にみえる、濃い緑の一群。

そこだけ取り残されたように森がある。

剣菱の本家。

頭上にあった、朝と夜のグラデーションは、数分と立たないうちに朝焼けに染まって、消えた。

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