オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
キスまでは、なんとか平気。

その先の行為に及ぼうとすることもあった。

でも、その記憶の中に、

ユリさんが言うみたいな、あったかいエピソードはない。


たまらなく気持ち悪くて、

汚いことをしているようで……

どうしても最後まで出来ない。


“好きなら出来るだろ”


そう言われたし、そう思う。

愛情を試されているようで、辛かった。


“お前、マジで俺のこと好きなの?”


出来ないことが、自分の気持ちを疑われてるような気がして、悲しかった。


やりたいだけのオトコも、

そうじゃないオトコも、

最終的には大して変わらない。

ヤレないとわかると、あっという間にダメになる。

そうなると、もう何を言っても、信じてもらえない。

ハジメテだって思われなかった分、最後に聞く罵りの言葉は、いつも酷いもんだった。


――でも……


「仕方ないよ。そこまで思える相手じゃなかったってことでしょう?」


――ああ、やっぱり、言われた通りだったのかも知んない。


「怖い?当たり前じゃん。だって、脱ぐのは服だけじゃないんだよ?心まで裸にされて、さらけ出して、自分だって知らなかった自分を見せるんだから……」


心のどこかで……

何かが、壊れていくような気がする。


「……スキじゃなかったから、できなかったのか…私……」

「そうは言ってないよ?……花美が適当な気持ちで付き合うような子だなんて、今は思ってない。でも、少なくとも花美の“スキ”は、相手の求めてる“好き”とは違ったんじゃないかなって思うだけ」

「……うん。そぅ…、かぁ……」


去っていく後姿を、追いかけたことはなかった。

涙を、流したことはあったっけ?


――その程度の“好き”……


Hが出来なくて、振られたんだと思ってた。

でも、違うんだ。

きっと、酷いことをしてたのは、私のほうだったんだ……

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